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客室乗務員

「カナダに大きな仕事があって不安なのだろうか」
「単身赴任で家族と離れ離れになって寂しいのだろうか」
と思い、食事のサービスの時に「○○さん、どうぞ」と、
名前を呼んでサービスをしようと思い、乗客名簿を広げました。
するとその席は「ミスター&ミセス」になっていたそうです。
「あれ? 奥様がいらっしゃるんだ」と思ったけれども、奥様の姿は見えない。
「上昇中でまだシートベルト着用のサインが出ているのに、
 奥様はトイレに行かれたのかな?」と思い、
自分のシートベルトを解いてその座席のところに行き、
「奥様はどこに行かれたんですか?」
と聞こうとした瞬間、言葉が出なくなってしまいました。
 空いた座席には黒いリボンをした遺影が飾ってあり、
その遺影にシートベルトがしてあったんです。
でも、座席のところまで来てしまったので、
本当は聞いてはいけないんですけど、
「これは奥様ですか? 
 如何されたんですか?」
と思わず聞いてしまいました。
 するとその男性は、
「25周年の銀婚式のお祝いに、
 家内と2人でカナダ旅行に行く予定でした。
 ところが脳内出血で1カ月前に亡くなってしまったんです。
旅行をやめるつもりだったのですが、
 子どもたちから
 『お母さんが待ち望んでいた旅行なんだから、
  自分たちが一番好きだったお母さんの写真を
  大きくして連れていってあげて』
 と言われたんです」とお話されました。
その客室乗務員は、
機内電話で「何かいいアドバイスはないですか?」と機長に聞きました。
機長は、「そこに今、奥様が生きて座っていらっしゃると思って
  サービスをしてあげて下さい」
と言いました。
その男性に聞くと、「女房は赤ワインが好きだった」と言われるので、
そのことを報告すると、
 「私からのお祝いで、
  一番いい赤ワインを1本出してあげて下さい」
と機長が言われました。
 赤ワインを注いだグラスを遺影の前に置き、もう一つをご主人に持たせ、
 「これは機長からのお祝いのワインです。
  どうぞ乾杯してお飲み下さい」
と言いました。料理も、ちゃんとレンジで温めて持っていきました。
奥様の遺影に向かって、「これはこういう料理です。
これはこういう料理です」と説明しながら出しました。
最後に乗務員みんなで20本ぐらいの花束を作り、
 「これは、私たち乗務員すべてからの銀婚式のお祝いです」
と言って渡しました。
ご主人は、カナダに着くまでずっと泣いておられました。
飛行機から降りていかれる時に、
乗務員に向かって、
 「素晴らしい銀婚式の旅立ちになりました。
  本当にありがとう」
とおっしゃったそうです。
 「その姿を、私は今でも忘れることができません」
と、彼女は話して下さいました。
「あなたたちは素晴らしい供養をしましたね」
と私は言いました。
亡くなった方が生きてそこにいるという気持ちで供養をするというのは、
よっぽど心が豊かじゃないとできないし、
後で褒めてもらえるだろうとか、
これで出世しようという損得が入ったらできません。
「あなたたちはそういう損得で考えなかったから
 できたんですね」
と言いました。
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小さな机とイス

by Garakuta_Town | 2010-03-22 21:27 | Garakuta  

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